こんばんは。
今日は、米軍のウールオーバーコートを紹介します。
米軍のウール製オーバーコートは、WW1のころからWW2、そして朝鮮戦争のころまで基本的な
デザインは変わりません。
しかし、チョコチョコマイナーチェンジはしており、1926年には、
サービスコートの開襟化に
合わせて、コートも開襟着用を前提とした作りになりました。
また、WW1の頃は、黒色の金属ボタンでしたが、戦間期はサービスコートと同じ金色の真鍮製ボタンに、
そして、WW2参戦後は、資源の節約を目的としてベークライト製のボタンに変更されました。
(ベークライトボタンへの変更については、野戦に関係ないサービスコートでも実施されているので
迷彩効果の期待というより、真鍮の節約や金メッキのコストを抑えるためでは無いかと考えています。)
WW2後は、ボタンを金ボタンに戻し、制服用のオーバーコートとして陸軍の制服がアーミーグリーン44に
変更されるまで採用されていたようです。
野戦用は、コットン&ウールライナーのM1946や
M1950オーバーコートに取って代わられたようです。
さて、以上が簡単なオーバーコートの説明ですが、今回紹介するのは、WW2中に採用された
戦時型のM1942オーバーコートです。
といっても、「M1942」というのは正式名ではなくコレクターが付けた名称です。
当ブログでは、このような正式ではないコレクター間の名称が多数出てきますが、単にオーバーコート
といっても、上記のように多くのバリエーションがありますので、採用年号で呼んだ方が分かり易い
こともあります。
ですので、ご了承ください。(間違っていることも多々多々多々ありますw)
ちなみに、このコートの正式名称は「OVERCOATS,WOOL,MELTON, O.D. ROLL COLLAR」です。
それでは、見ていきましょう!
これが、その戦時型のウールオーバーコート(以下M1942コートと記載)です。
先に書いたとおり、基本的なデザインはWW1の頃から変わっていませんが、開襟着用を前提と
しているので、襟にホックが無く、下襟が開くようにアイロンがけされています。
材質もウール100%のメルトンで、重量は一応32オンスとなっています。
ボタンは、戦時型ですのでベークライト製で、正面は中央に3組。上襟の下に1組の
計4組が縫い付けられています。
写真からも伝わってくる?と思うのですが、ズッシリ重たいコートです。
ちなみに、もうお気づきかもしれませんが、このコートは先日入手してレストアした
このコートなんです!!!
あれだけシワクチャ&虫食い&Sスタンプ等のシミがありましたが、レストアとクリーニングのおかげで
生地も綺麗になり、シミも取れ、アイロンでシワを伸ばして完全復活です!!!^^

襟を閉じてみました。
DoughBoyスタイルですw
一気に古めかしくなりますね!でも、将来的にWW1の軍装をやるとしたらこれが基本です。
う~ん。。。首周りがすれそう・・・
ちなみに、米軍は戦前~戦中にかけて兵用の野戦用のオーバーコートとして、
コットン&ウールライナーの新型コートを採用しようとしていましたが、戦時という事もあり
資材やコストなどの点から採用を断念しました。
その結果、このコートは将校専用のフィールドオーバーコートととなり、兵用として
採用されるのは、戦後のM1946になってしまいました。
また、WW2中に冬期用の野戦服として開発されたM1943ジャケット&ライナーは、軍上層部が
アイクジャケットを無理やり採用した為、生産&支給が遅れ、WW2末期のバルジの戦いでも
この重たく動きづらいオーバーコートが着用される事となりました。

上襟を上げたところです。
このように、襟の下に隠れる形で1組のボタンがあります。
これは、下襟を閉じる為のもので、防寒時に使用します。
ちなみに、ドイツ軍等のコートである襟を立てたときに使用するタブはWW1の頃の
製品にはありますが、WW2中や戦前のコートにはありません。

背面です。
背面中央には、プリーツと2つのボタンを使用したハーフベルトが有り、ベルトで
ウエスト部をシェイプしていますw
ですが、ズラせば多少のサイズ変更は可能です。
また、オーバーコートなので、裾はひざ下まであり、ベンツはセンターにあります。
ここのデザインもWW1の頃から変わっていません。

上でプリーツと書きましたが、このようにアイロンを掛けることでプリーツを作っています。
しかし、縫ってプリーツを作っている訳ではないので、たまにアイロンを掛け直さなければ
行けないと思います。

襟裏です。
サービスコートのように、オーバーコートの襟裏にも羅紗のような起毛された生地が貼られています。
しかし、オーバーコートは、本体も羅紗のように起毛したメルトンなので、同じです。
また、資源節約のためか、このように四枚の生地を合わせています。
また、エポレットのボタンもベークライト製です。

これは左右の前合わせです。
米軍のオーバーコートはWW1の頃からダブル合わせで変わりありません。
また、戦前~戦中~戦後とこのように両方の合わせにボタンホールが作られています。
男性は基本左前見頃が上に来るように着ますので、右前見頃のボタンホールは不要と思いますが、
風雨の激しい海軍のピーコートは風の向きに合わせて合わせの向きを変えるようなので
陸軍も同じような理由なのかもしれません。
でもここら辺は、戦時の省力型なら省略されていそうですが・・・

内装です。
表地は膝下までありますが、コットンの内装は、腰までしかありません。
ここもWW1の頃と同じで、WW2中のドイツ軍など各国あまり変わらないようです。
使用されている布地はカーキのコットンで、サービスコート等と同じです。
またこの写真では、ポケット内部の袋の形状と左前身頃裏(膝部分)の防風タブの
位置がよくわかります。

これは、襟元のスタンプ&書き込みです。
38Lはサイズ表記で、自分にはちょっと袖と着丈が長いので近日中に詰める予定です。
また、H-3763は、持ち主の番号です。
Hは、名前の頭文字、3763は認識番号の下四桁です。
米軍の規則では、自分の被服や装備にこの番号を書き込むことが規定されていました。
書き込む位置はアイテムごとに決まっているようです。

これは、ポケット裏側のボタンです。
このコートのポケットは貫通ポケットになっており、通常のポケットとして使用する以外に
写真のボタンの位置からコート内側に手を入れる事が出来るようになっています。
この機能によって、コート下のジャケットのポケットに手を入れて、色々出し入れする
ことができます。
貫通ポケットはボタンによって閉じることもできます。(写真は閉じた状態。)

これは表側のポケット口です。
フラップのないスラッシュポケット?スリットポケット?で、内部は上記のように袋状の
通常のポケットと貫通ポケットの作りになっています。
ちなみに、この貫通ポケットの作りは結構便利です。

上で少し書きました、防風用のタブです。
このコートは裾が膝下まで有りますが、ボタンは腰の位置までなので、強い風が吹くと
裾がめくれてしまいます。
そうなると、せっかく内部で温まった空気が逃げてしまい、体は温まりません。。。
なので、このタブを使い裾がめくれないようにするのです。
ちなみに、このコートのタブやポケットに使われている小ボタンですが、赤みの強い茶色と
この写真のようなベージュなど、色にバリエーションがあります。
個人的には、古い製品の方が赤みの強い茶色だと思います。

これは防風タブを使った例です。
このように風が吹いても裾がこの位置までしかめくれません!!
でも、冬場実用した限りでは、確かに少しはマシですが、タブを使用すると歩きづらくなり
野戦で走ったりするとコケる危険性があるので使用には注意が必要です。

QMタグです。
正式名称は、上のとおり「OVERCOATS,WOOL,MELTON, O.D. ROLL COLLAR」です。
ただ、物によっては同じスペックにも関わらず生地の重量の32OZが正式名に入っていたり
します。
見にくいですが、Specが164なので、戦時型とわかります。
米軍のオーバーコートは、戦時型ではない金ボタンのSpecは、8-51A 8-51B 8-51Cとなっています。
8-51Aは1937年採用、
8-51Bは1940年採用、8-51Cは1947年採用です。
しかし、WW2で採用&生産されたベークライトボタンの戦時型はSpecが164と区別されています。
なので、タグがかすれて日付などが見えなくても、164と書いてあれば戦時型と判断できます。
個人的には、未だ1937年採用のSpec,8-51Aや1926年に採用されたオーバーコート(Spec,8-51か?)
を見れていないので、今後コートのSpecについても勉強していこうと思います。
また、製造日は1942年11/14、採用日は1942年4/2です。
(おぉ!これ書いてる今が4/2の夜だwwww)
メーカーは「ALBERT-TURNER,INC,」です。
アルバートさんが作った会社かな?このブログには以前別の
アルバートさんが登場しましたねw

これは、ボタンです。
米軍の制服に用いられるボタンは、このような国章を打ち出した物となっています。
これは戦時型なのでベークライト製ですが、戦前や戦後の制服タイプは金ボタンです。
大きさは28mmで、インチ表示にすると1-1/8です。
また少々見づらいですが、
20オンスウールトラウザーズに似た起毛された
厚い32オンスのウール生地がわかります。

裏です。
米軍のベークライトボタンは、このように足が金属になっており、強度は高いです。
省力化、低コストを目指しても、必要な部分にはお金をかける。
さすがアンクルサムです。

さて、以上が無事にレストアされ生まれ変わったM1942コート君でした!
ボタン代やクリーニング代などのレストア費用を考えると、安くはありませんが
自らの手で、修理し綺麗に復活させるのはなかなか気持ちいいです^^
今後は袖丈と着丈を直して、野戦用(実用)コートとして活躍してもらいましょう♪
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- 2013/04/03(水) 00:14:05|
- 大戦米軍
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